阿修羅のまなざし……!
天平のまなざし・1300年後の現代に問いかける阿修羅の祈り!



トップページ 平成の出開帳「阿修羅展」 修羅界の王! 帝釈天VS阿修羅 身長153.4a、体重14.85`。 匠のわざと科学の融合 梱包は軽量化
 

  興福寺創建1300年記念「国宝 阿修羅展」

 


天平のまなざし、東へ西へ――。


奈良・興福寺(710年創建)の阿修羅
像(734年、国宝)が、東京と福岡で
開かれる「国宝 阿修羅展」に出展される。

通常は正面からしか見られない像を、
ガラスケースのない空間でどの向き
からも拝観できるチャンスだ。

時を同じくして造られた他の八部衆像
と十大弟子像も付き添う初の長旅。

憂いを秘めた少年像は、ささくれだっ
た世に疲れ切った現代人の心を静か
に癒やしてくれるに違いない。



 

    阿修羅・人気の秘密


 「人気、実力ともに仏像界のスーパースター」。

彫刻家の籔内佐斗司さんは、阿修羅像を手放しで評価する。
確かに美しい仏像なのだが、実のところ阿修羅はインド神話の神像、つまり脇役だ。

 なぜ、バイプレーヤーが主役を食うような人気を得ているのか。
寺内諸像の配置を12から13世紀に描いた「興福寺曼荼羅(まんだら)図」でも、西金堂の本尊・釈迦三尊像の後ろにひっそりと立っているというのに。

 小説家、堀辰雄は「その一心な目ざしに自分を集中させていると、自分のうちにおのずから故しれぬ郷愁のようなものが生れてくる」(『大和路』=1941年)と記した。

確かに正面を見据えた少年の面持ちは、どこか懐かしさを感じさせる。
それが人気の秘密だろう。


 

  阿修羅のまなざしは深く

 それでは、やや斜め後ろを向いた左右もうふたつの顔はどうか。

哲学者の梅原猛さんは「三面の顔は、それぞれ日常の顔と、怒りの顔と、笑いの顔を
示すのであろうか」(学習研究社『人間の美術4 平城の爛熟(らんじゅく)』)と書いた
が、細く長く伸びる腕が視線を遮り、正面から全体をとらえることは難しかった。

 今回は東京、福岡両会場とも、ガラスケース越しの拝観となる興福寺国宝館と違
い、間近に拝観できる好機。左右の表情もじっくりと見られる。

 向かって左の細面は、両眉をややつりあげて下唇をかむ。
その視線は明らかに目の前の一点を見据えていて、爆発寸前の怒りと哀(かな)しみ
に耐えている。

向かって右のやや角張った顔は、眉根を少し寄せてはいるものの、怒りとは言い切り
がたい慎(つつ)ましさが漂う。
迷いを捨てて歩み出そうという決志の表情かもしれない。

 すると、正面の顔は、前におわす釈迦の説法を聞いて得心し、心の中からあらゆる
波を消し去ることができた超然の容貌(ようぼう)か。
 見れば見るほど、阿修羅のまなざしは深く、複雑になっていく。


 

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